順位麻雀とトップ麻雀との実力の比較に関して
とつげき東北
概要
表題の通り。
順位麻雀での成績と、トップ麻雀での成績(要するにカネ)との関係について定量的に論じる。
あわせて、シミュレータを用いたいくつかの研究結果を報告する。
「安定Rは1950だけど、リアルでは強い」人など存在しないことが証明される。
データ
東風戦
通常時トップ率25.06(同着のカウント等による関係)
和了率+4 トップ率29.71
和了率+3 トップ率28.57
和了率+2 トップ率27.45
和了率+1 トップ率26.30
和了率-1 トップ率23.88
和了率-2 トップ率22.67
和了率-3 トップ率21.45
和了率-4 トップ率20.38
放銃率-3 トップ率26.17
放銃率-2 トップ率25.83
放銃率-1 トップ率25.47
放銃率+1 トップ率24.78
放銃率+2 トップ率24.49
放銃率+3 トップ率24.23
東南戦
通常時トップ率25.13
和了率+4 トップ率30.84
和了率+3 トップ率29.32
和了率+2 トップ率27.95
和了率+1 トップ率26.52
和了率-1 トップ率23.69
和了率-2 トップ率22.23
和了率-3 トップ率20.88
和了率-4 トップ率19.40
放銃率-3 トップ率26.68
放銃率-2 トップ率26.03
放銃率-1 トップ率25.56
放銃率+1 トップ率24.61
放銃率+2 トップ率24.13
放銃率+3 トップ率23.75
トップ率と和了率・放銃率との関係に関して
安定R(平均順位)に着目した【和了放銃方程式】においては、
R = 40A - 25H (東風戦・総レンチャン)
R = 50A - 31H (東南戦・和了レンチャン)
R:安定R A:基準に対する和了率の増分 H:基準に対する放銃率の増分 R0:基準R
のような関係式が成立し、順位に着目した場合、放銃率に対する和了率の重要度(係数比)は各々1.60、1.61であった。
しかし上記の結果を見てわかる通り、トップ率に着目した場合には、明らかに放銃率に対する和了率の重要度が増す。
ある程度の目安として上のデータを近似すると、
東風戦において トップ率 T = 1.18A - 0.382H
東南戦において トップ率 T = 1.41A - 0.48H
となり、トップ率に着目した場合、放銃率に対する和了率の重要度(係数比)は各々3.09、2.94となる。
簡単に言えば、「順位に着目する場合より、トップ率に着目した場合の方が、和了率が非常に重要になる」ということだ。
では、そのことから、順位麻雀とトップ麻雀においてどの程度、どのように打ち方を変更すべきかを論じる。
トップ率・平均順位と収入に関して
例えば25000点開始の30000返しだとして、ウマが5-10だとしよう(ワンスリー版を後に論じる)。
トップを取ることで15000点分(+15)の収入となり、また1位ならさらに+10、2位なら+5、3位なら-5、4位なら-10の「得点」の移動がある。
簡単のため、順位分は1位なら+10、2位なら+3.3・・、3位なら-3.3・・、4位なら-10と一様な分布にする。
それと別にトップ率×15を取得、(100%-トップ率)×5を失うものとする。
得点分布は別にしておいて、順位・トップ率だけから平均収入を計算してみよう。
このルール下で、他家に対するある人の安定R増加分がR、トップ率がT(%)である場合、この人の平均的な収入Gは
G = R/1200*6.66・・ + 0.15T - 0.05(100-T)
G = -J*6.66・・ + 0.65T -5 (順位表示版、J:順位の2.5からの増分)
となる。
さらに、各々の評価を考えよう。
MJSIM0のシミュレーションによると、
東風戦の場合、平均順位0.1の上昇に対して平均1260点の収入の増加がある。
東南戦の場合、平均順位0.1の上昇に対して平均1680点の収入の増加がある。
したがって、東風戦だとトップの人は平均43900点、2位は31300点、3位は18700点、4位は6100点持っている。
東南戦だと同様に50200点、33400点、16600点、-200点となる。
これを導入するわけだが、トップへのオカ分については既に考慮されているので、平均順位に従った得点分布の得点が得られると考えられる。
G’= -J*6.66・・ + 0.2T -5 -12.6J(東風戦)
G’= -J*6.66・・ + 0.2T -5 -16.8J(東南戦)
と補正でき、結局
G’= -19.26J + 0.2T -5 (東風戦)
G’= -23.46J + 0.2T -5 (東南戦)
G’:1試合あたりの平均プラス J:2.5からの平均順位の増分 T:トップ率(%)
となる。もちろんゲーム代は除く。
(確認)平均順位2.5、トップ率25%の場合いずれの式においてもG’=0となる。
平均順位を0.1(安定Rを120)上げることは、東風戦の収入にして+1.9266、東南戦の収入にして+2.3466の価値がある。
トップ率を5%上げることは、収入にして+1の価値がある。
したがって、東風戦で平均順位0.052とトップ率5%との重要度比率が等しくなり、東南戦で平均順位0.043とトップ率5%との重要度比率が等しくなる。
なお、ピンのワンスリーだと、同様の式は
G’= -J*20・・ + 0.2T -5 -J*12.6(東風戦)
G’= -J*20・・ + 0.2T -5 -J*16.8(東南戦)
となるから
G’= -32.6J + 0.2T -5 (東風戦)
G’= -36.8J + 0.2T -5 (東南戦)
である。
平均順位を0.1(安定Rを120)上げることは、東南戦の収入にして+3.68の価値があり、平均順位0.027とトップ率5%との重要度比が等しくなる。
順位による収入分が増大すると、当然トップ率の重要度は下がる。
またチップを導入すると、さらにトップ率の重要度は下がることとなる。
例えば、平均順位2.4位(J=-0.1)、トップ率28%(T=28)の人は、東南戦・ピンのワンスリーで1試合あたり
G = 3.26 + 5.6 -5 = 3.86(386円)
の収入が期待できることになる。もちろん、ここからゲーム代を引かれるわけだが。
平均順位2.35位(J=-0.15)、トップ率32%(T=32)だと、
G = 5.52 + 6.4 -5 = 6.92(692円)
となる。
ここまで強くても1試合で92円の収入なのだから泣けてくるね(笑)。
順位麻雀とトップ麻雀の実力の比較に関して
普通には、トップ率30%程度の打ち手は、東風戦で平均順位2.37、東南戦で平均順位2.36程度である(シミュレータの実測による)。
普通にというのは、トップ狙いや順位狙いについて何も考えずにある和了率・放銃率のもと打たせた場合の、トップ率が30%に対応する時の平均順位のことを指す。
トップ率を5%上げて30%にすることは、ある程度強い相手(例えば超ランの他家平均を想定してみよ)と打つ麻雀においてはかなり限界に迫った難しさである(東風荘超ランにおいて、トップ率が長期的に30%を超える人は間違いなく最強クラスである)。
それに対し、トップ率5%と同等の価値を持つ平均順位はウマ5-10の東南戦で0.043位分(安定R51.6分)、またウマワンスリーの東南戦で0.027位分(安定R32.4分)であり、5%上昇に比べればまだまだ余力のある範疇だと言える(東風荘超ランにおいて、安定Rが平均より長期的に52とか32高い人は数多く存在する)。
トップ偏重にすることによって「リアルでより勝ちやすい」打ち方にすることもできるが、収入という観点から見ても、せいぜい順位で言えば0.043位程度の技術の差(トップ率を不自然に5%も高められたとしても)にしか当たらないと知るべきだ。
長期安定Rにして50の差がある場合、弱い方の「自分はトップ麻雀だから、リアルでは勝てる」という弁明はかなり厳しいものがある。
まず一番ありがちなことは、通常は順位とトップ率は強く相関するので、負け側はトップ率においても負けているだろうということだ。
しかしここではそうではなく、異常なくらい実戦に特化したトップラス麻雀をやっているとしよう。
通常の自然な順位分布より、トップ率が5%も高くなっていたとする(普通、トップ率が5%も高ければ相手よりRが156も高くなるはずなのだがそれは置いておいて)。
しかし、それでやっと収入にして安定R50(順位0.043、ウマ5-10の場合)分とか、安定R32(順位0.027、ウマワンスリーの場合)分の差が埋まり、「リアルで」同じ程度の強さになるわけだ。
「私は平均順位2.5ですがトップ率は35%です」とでも言うなら別だが、上記の計算によって、長期安定R50程度の差は「リアルでの収入における実力差」として充分大きな差であることがわかる(特にオカに対するウマの比率が高い、いわゆる高レート麻雀ほど、トップ率より順位が重要になる、長期安定R30の差で「充分な差」といえる)。まあ、千点10円でウマが超安いような場でなら「トップ麻雀」が強いかもしれない。トップを取ることが大事だから東風では負けるがリアルでは勝てる、と言ってる人は、よほど安いレートで打っているのか馬鹿かのどちらかだ。
長期安定Rにおいて50とか30の差があれば(ルールによる)、「トップ麻雀に対応した」程度で強さが逆転することは現実的にはほとんどあり得ない。
攻撃型・守備型などによる「リアルへの対応力」の差は、意外なほど小さいのだ。
これまでしばしば凡人によって言われてきたことは「ルールが違うから東風と実戦は比較できない」「東風の強さとリアルの強さは違う」ということであった。
確認すべきは、彼らは「比較できない」根拠として、しぐさ読みやら、目線読みやら、流れ読みやら、トップ麻雀か順位麻雀かという違いやら、東風戦か東南戦かという違いやら、客層の違いやら、牌の混ぜ方(ツモ)の違いやら、赤があるかないかやら・・・その他あらゆる「違い」をあげつらったことだ。
「違う点」を上げることなら誰にでもできる。
彼らはその水準ではあったと同時に、その「違い」の度合いを定量化することができない水準でしかなかった(ついでにそれを予測する直観力にも重大な欠陥があったわけだが)。
私は和了放銃方程式の記述の際に、「東風戦総レンチャンか、東南戦和了レンチャンか」というルールの差によっては、「実力」に対して重要なパラメータの比率がほとんど変化しないことを示した。また、他家の和了率や放銃率が変化しても、現実的な範疇では「実力」の表現は変化しないことを示した。
そしてここで、安定R50程度(または32程度)以上の差があれば「トップ麻雀か、順位麻雀か」というルールの違いによって実力が逆転することは現実的に絶望的であることを示した。
G’= -36.8J + 0.2T -5 (東南戦)
このような記述から明らかな通り、「順位の良さ」こそが「リアルでの収入の多さ」なのだ。
東風負け組み、つまり実戦負け組みに残された言い訳が、徐々に理論的に少なくなってきてしまったわけだ。
もう一度予測するが、実戦で勝つ人は少し慣れれば東風で勝つ。
東風で勝つ人は、少し慣れれば実戦で勝つ。
もちろん、「全く同じだ」などと言うつもりではない。若干は打ち方を変化させるべき部分もあるだろう。
しかし「比較できない」とだけ声を大にして言うのはばかげている。
圧倒的にある和了率や放銃率の差、技術の差(例えば安定R80といったような)が、わけわからん直感の「状況への対応」ごときで埋まるはずがないと言っているのだ。
どちらか片方が強かったり弱かったりするように思うのは、何のことはない、データ不足がその主な原因である(麻雀の実力計測に充分と言えるデータを集めるまでに慣れない人は麻雀に向いてない)。
こうして一つ一つ定量化してゆくと、最後には「テンパイタバコの差異」だけが残るような気もしないでもない。
平均人の全ての語りはオカルトである。
MJSIM0に、雀荘での収入を計算する機能もつけた。
ぜひ活用していただきたい。
批判者へ
別の「差」を持ち出してこの論旨を批判する方は、今まで持ち出していてここで間違いだと示された部分についての説明をすること。
その差がどの程度大きな影響を持ちえるかを概算して報告すること。
「違う」と言うことは恐ろしく簡単だ。しかし、それを言うなら「全ての麻雀は、相手が違う。ゆえに麻雀の実力は常に比較不可能で、実力など存在しない」と言って良いことになる。
なぜ君は嘘をついたのか? 別の「差」は、君が以前に言ったような「(嘘の)差」と違って嘘でない根拠はあるのか?
君の主張はもはや私には、残念ながら「実戦には流れがあるから、東風とは違う」という主張より優れているようには、見えない。
なぜなら私は君の直観力をこれ以上になく疑わしく思っているからだ。